リンク作成シェル拡張の開発をずっと止めている件について

現在のバイナリは、Vista対応と書いてはありませんが、Vistaでも一応、動作します。Vistaでは、フォルダ・ファイルへのシンボリックリンクがmklinkコマンドで作成できることは皆さんご存じでしょうが、あれはれっきとしたシンボリックリンクです。ジャンクションではありません。逆に、Vistaでは、リンク作成シェル拡張が作ったジャンクションに対して、「ショートカット」のアイコンオーバーレイをしません。この辺りの意図についてはよく分かりませんが、そうなっているので仕方がありません。

ところで、リンク作成シェル拡張が長い間アップデートされていないことについてですが、実は、これは僕が忙しいからという単純な理由ではありません。いろいろなところから、配布元がなくなって困るという連絡をいただいたので、先日、Sourceforgeで公開している旨を書きましたが、実のところ、その配布にはあんまり前向きな心境でないことも事実です。

以前にもesideで書いたことなんですが、どうやら、シンボリックリンクという物自体が、GUIのシステム向きじゃないんです。むしろ、Windowsのショートカットがタダのファイルであって、シェルによって特別扱いを受けているだけという状況の方がGUI向きなんです。というのも、GUIからファイルを管理するにあたって、本物のファイルとほとんど区別の付かないシンボリックファイルというものをユーザーが認識できないことが多いと言うことが分かってきたからなんですが、簡単に言えば、シンボリックリンクを修正した場合に、大本が修正されるという現象がなかなかわかりにくい。Mac OSが9まで維持してきた、フォルダとウィンドウの関係に似ているといえば似ているんですが、一部のちゃんと物事を理解しているパワーユーザーを除けば、ほとんどのユーザーは一つのフォルダが2つ以上のウィンドウで表示できることすらちゃんと理解できていないことがあります。そして、リンク作成シェル拡張を使うようなユーザーの中にも、いろいろな雑誌で紹介されたことがアダとなっているんでしょうが、そういう基本が理解できていなくて、困ったことになる人がいるんです。

さらに、Officeをはじめとしたアプリケーションでもシンボリックリンクを認識できないことは極めて多く、せっかくシンボリックリンクで運用していたはずのファイルが気づくと実体化され、元のファイルとのリンクが切れてしまっていたということが発生します。当然、ショートカットならばこんな事も起きないわけです。

なので、個人的には、Windows上では、少なくともシンボリックリンクは使い方を間違うことが多いという結論に至ったため、これ以上、地球上の人々がミスを犯すのを助長するような行為は止めようと思っています。気持ちとしてはパンドラの箱を開けてしまったんじゃないかという感じなんです。

とはいえ、シンボリックリンクを活用されている方々に対しては、勝手に配布を止めては迷惑がかかるわけで、配布は続けます。そして、バグ報告があれば修正します。ただし、Vistaでのファイルのシンボリックリンクに対応してくれというお願いについては丁重にお断りさせていただきます。ただし、ソースコードはオープンですので、他の方が勝手に改造して再配布することに関しては、僕個人としては、どうぞご自由にという態度です。必要な方が必要に応じてメンテナンスをされることに関しては、僕にはそれを制限する権利はないと考えています。それこそ、修正BSDライセンスを採用した最も大きな動機です。